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都市部で増えるキイロスズメバチ巣問題とは
かつては山林や里山などで見かけることが多かったキイロスズメバチですが、近年、その生息域は都市部へと拡大し、私たちの生活空間における巣の問題が深刻化しています。なぜ都市部でキイロスズメバチの巣が増えているのでしょうか。その背景には、いくつかの要因が考えられます。一つは、都市環境への適応力の高さです。キイロスズメバチは、他のスズメバチと比較して、多様な環境に巣を作ることができます。都市部には、公園の樹木、街路樹、家屋の軒下、壁の中、屋根裏、マンションのベランダ、さらには換気口やエアコンの室外機の中など、巣作りに適した閉鎖的な空間が豊富に存在します。これらの場所は、天敵から身を守りやすく、雨風もしのげるため、キイロスズメバチにとって魅力的な営巣場所となっているのです。二つ目の要因として、餌資源の豊富さが挙げられます。都市部には、公園や街路樹にいる他の昆虫類(セミ、チョウの幼虫など)や、人間が出す生ゴミ、清涼飲料水の飲み残しなど、キイロスズメバチの餌となるものが豊富に存在します。これらの餌を求めて都市部に集まり、そのまま営巣するケースが増えていると考えられます。三つ目に、温暖化の影響も指摘されています。冬の寒さが和らぐことで、越冬する女王蜂の生存率が高まり、翌春の巣作りが活発になる可能性があります。また、活動期間が長くなることも、巣がより大きく成長する要因となり得ます。都市部でのキイロスズメバチの巣の増加は、様々な問題を引き起こします。公園や通学路、住宅地など、人の活動エリアに巣が作られることで、刺傷被害のリスクが高まります。特に子供やお年寄り、アレルギー体質の人にとっては、深刻な脅威となります。また、巣の駆除にも専門的な技術と装備が必要であり、駆除費用の負担や、駆除に伴う一時的な立ち入り制限なども発生します。この問題に対処するためには、行政による定期的な公園や街路樹の点検・駆除体制の強化、住民への注意喚起や情報提供、そして私たち一人ひとりが自宅周りの点検や予防策を講じることが重要です。都市環境と野生生物との共存は容易ではありませんが、キイロスズメバチの生態を理解し、適切な対策を継続していくことが求められています。